AIはどのようにして病理学者不足を解決するのか

NVIDIA GPUテクノロジー/医療活用事例

業種:医療機関/医療研究機関

このストーリーは、シグ・チュープル社の低価格で高性能なAI自動顕微鏡を使って、病理学者不足を解決する、というものです。

テーマ

病理学者不足は、世界的に深刻な問題です。この問題を解決するためにシグ・チュープル社はAIを使った自動顕微鏡を開発しています。
この顕微鏡はNVIDIA社のGPUを搭載し、高レベルな分析を可能にしました。また、分析結果をクラウド上に保存することで共有し、病理学者達がどこにいても確認することができます。高機能であり低価格であることから、発展途上国でも使用できます。

1676年にオランダの織物商人が、偶然バクテリアを発見してからずっと、顕微鏡は医学において重要な道具でした。今日、顕微鏡は人間の目の800,000倍のパワーがありますが、いまだに人の手によってレンズに異常はないかを厳重に検査する必要があるのです。

それは大抵病理学者の役目ですが、そこが問題なのです。世界中で、そのような医師のうち病気を診断・観察・治療するための臨床実験を解明できている医師は非常に少ないです。

現在、スタートアップ企業を支援するインセプションプログラムのメンバーの一員であるシグ・チュープル社は、病理学者不足の解決に取り組むことができる、AI顕微鏡の実験を行っています。GPUを備えた装置は、問題を見つけるために自動的に血液の標本やその他の生体サンプルを読み取り、分析します。

100万人に1人

National Cancer Institute

今月号の医学雑誌ランセット(The Lancet)によると、病理学者の不足は、適切な診断を受けられない患者達が不適切な治療をされているような貧困国にとって、特に深刻な問題となっています。同雑誌の調べによると、例えば、サハラ以南のアフリカでは病理学者は100万人あたり1人しかいません。
しかし問題は貧困国に限られたものではありません。ランセットによると、病理学者の割合は中国では130,000人に1人の割合です。一方アメリカでは、最新の数字によると100,000人あたりにつき5.7人という割合です。さらにアメリカでの調査によると、2030年には病理学者の数は100,000人につき3.7人にまで減少すると予測されています。

インドでは、現在65,000人に1人の割合で病理学者がいます。これはつまり13億人もの国民を治療するために全部で20,000しか病理学者がいない、ということを意味します、と共同創設者でありインドのベンガルールに本拠地を構えるシグ・チュープル社の最高技術責任者でもあるタサガト・レイ・ダスティダール氏は述べています。
「ここには人的コストがかかっています。病理学者がいないような多くの場所で、十分な訓練を受けていない技術者が報告書を洗いざらい書き出し、そうして出てきた事実が察知された時にはもう手遅れになっているでしょう」とダスティダール氏は述べました。シグ・チュープルの自動顕微鏡は従来の装置の何分の一かの費用で、病理学者が極めて少ない発展途上国でも取り入れられるような手頃な値段にしました。

低コストで高いパフォーマンスを発揮する顕微鏡

シグ・チュープル社の装置は最初の自動顕微鏡ではありません。デジタルスライドスキャナーとして知られている装置は、自動的にスライドガラスをデジタル画像に変換し、結果を解析します。しかしシグ・チュープル社の顕微鏡は、発展途上国を含む多くの研究所でも無理なく手に入るような、デジタルスライドスキャナーの何分の一かの価格で売られています。
その会社のAI顕微鏡は、レンズの下のスライドを読み取ることによって、GPUでアクセラレートされたディープラーニングを使ってデジタル画像を分析し、クラウド上のシグ・チュープルのAIプラットフォーム上か、または顕微鏡そのもののなかで稼働しています。血液や尿、精液の分析には、異なるディープラーニングのモデルを使用しています。

顕微鏡は細胞を識別したり、それらを各カテゴリーやサブカテゴリーに分類したり、異なる細胞の種類の数を計算するといった機能を行っています。

例えば、血液の標本用として、ショニット(Shonitーサンスクリット語で血液の意味)では、赤血球・白血球・血小板を識別したり、それらの位置を正確に示したり、白血球の異なるタイプの割合(一般に白血球百分率として知られています)を計算しています。また機械学習法を駆使して、細胞の2D画像から3D情報を算出することもできます。

調査によると、シグ・チュープルはインドの最先端の研究所をいくつか運営していて、ショニットの正確さは他の自動分析装置に匹敵するものでした。また病理学者でも自動装置でも大抵は間違えてしまうような、珍しい種類の細胞を識別することにも成功しました。

クラウドにおける専門家からの評価

スライドを読み取るための低コストな方法を提供することに加えて、専門家でなくても利用可能なことから、ダスティダール氏はシグ・チュープルのAIプラットフォームを、専門家の実験報告書を提供するための理想的な手段とみています。

自動分析と同様に、どの病理学者がどこにいても実験結果を読み取ることができるように、データをクラウドに保存します。この会社のクラウドプラットフォームもまた、病理学者達が難しい事例を一緒に研究することを更に容易にしました。「それ以前は、ある研究所から別の研究所へスライドを輸送しているようなものだった」とダスティダールは言いました。

シグ・チュープルの次の計画はショニットの正式な審査を行い、更に商業的な本格展開を開始することです。

シグ・チュープル社とショニットについてもっと知りたい方は、ダスティガール氏のGTCでの講演を観るか、シグ・チュープル社のの最近の報告書「ディープラーニングを使った末梢血液の標本の顕微鏡画像の分析」をご覧ください。

本記事はThe Official NVIDIA Blogの記事を抄訳したものです。
「Path Math: How AI Can Find a Way Around Pathologist Shortage」
(2018年5月24日付)
https://blogs.nvidia.com/blog/2018/05/24/pathologist-shortage/

※シグ・チュープル社のAI顕微鏡画像や報告書へのリンク、文中紹介の医学雑誌から引用された画像は上記Blogでご確認ください。

GPUテクノロジーを体験したい方は、リアルイベントご参加をご検討ください!

GPUテクノロジーイベントカレンダーは こちら から

お問い合わせ・資料請求はこちら

ページの先頭へ戻る