Semtech 技術記事連載 第2話
システムレベルのESD保護が「保険」とは呼べない理由

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TVS(Transient Voltage Suppressor)保護素子について、次のような話をよく耳にします。
「TVSは素晴らしい保険である」あるいは「必要ないかもしれないが、保険としてTVSを検討する」という話です。
これらの声は、設計エンジニアが回路保護に向けたTVSの使用について、将来の予期せぬESDやサージに対する事前または追加の「保険」程度のようなものであるという考え方から生まれてしまったものです。
しかし、今日における電磁両立性(EMC)とESDからの電子機器保護の観点においては大変危険な考え方であり、実際の問題としてこの考え方を改めなければ、電子機器に対して十分なESD保護を実現できない可能性があります。

例えば、自動車保険や生命保険などの保険に加入するとき、私たちは不測の事態で発生する損失をヘッジするために発生確率が低いものに対して保険料を支払います。リスクが上昇すれば、保険会社はリスク上昇を織り込んで保険料を引き上げたり、保険契約の仕組みそのものを取りやめてしまうでしょう。それが俗に言う「保険」というものです。
では、この「保険」として位置付けられてしまっている「システムレベルの ESD 回路保護を設計すること」がどれほど重要なのか、いくつか例に挙げてみようと思います。

■ESD回路保護は、TVSを使うことであらかじめIC破壊を防げる
当たり前のことかもしれませんが、TVSはIC(DUT)を保護し、破壊を未然に防ぐために存在します。
一方で「保険」の場合を考えてみます。保険会社では損失が発生した後の補填を目的とした価値しか提供してくれません。
リスクへの対応の仕方そのものが異なることがお分かりになるでしょう。

■電子機器ではESDの脅威がどこにでも存在し、頻繁に発生する
電子機器は頻繁にESDの脅威にさらされており、露出したポートのほぼ100%が影響を受けてしまいます。それに対してTVSは、頻繁に発生する過渡現象の脅威から電子機器を保護する役割を担います。ESDの過渡現象が起こる頻度に関係なく、その性能に基づいて電子機器を守ってくれます。
さて、これが「保険」の場合ならどうでしょうか?災害が毎日発生するような状況下で、被保険者が100%影響を受けることを知っていれば、保険会社はそれらの脅威に対しての補填は引き受けないはずです。

いかがでしょうか?「保険」として位置付けるには、考えが少し甘いかもしれない…と思っていただいた方もいらっしゃるのではないかと思います。

更にもう1点、システムレベルのESD保護を語るうえで重要なポイントがあります。
ICが、ESDに対してより敏感になっている事に皆さんはお気づきでしょうか?

かつてのICは、システムレベルのESDに対して強い耐性を持つものもありました。というのも、より太いプロセスノードで作られていたためにESD保護に充てられる回路の割合が大きかったからです。しかし、それは過去のお話です。
ご存知のとおり、現在のIC 製造の世界ではプロセスノードの微細化が急激に進んでいます。半導体業界の進歩によりプロセスノードが 10 ナノメートル、またはそれ以下の微細化技術が採用されるにつれて、電子機器へのESDのリスクは高まっています。

プロセスノード別のシステムレベル ESD 耐性  © Semtech Corporation

実際にセムテックの設計エンジニアのコミュニティでは、「外部ESD保護は、もはや必須である」との多くの声があがっています。システムレベルの ESD 保護はオプション事項ではなく、必要不可欠なものへと変わったのです。
以前までは、TVSを使用しなくてもエンジニアは安心できたかもしれません。しかし、時代の変化とともに微細化されたプロセスノードの IC が使用される今日の世界では、ESDの脅威に対してTVSを使用し、堅牢であることが求められています。

如何でしたでしょうか?今回は、システムレベルのESD保護の重要性について説明させていただきました。
これを機に、今ご使用されている基板にTVSをご検討いただき、これから登場する高性能なICへのESD対策として是非ともご活用ください。


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