車載向けカメラの急速な発展により、高速なデータ通信や画像通信への要求が非常に高まっています。
低電圧で高速の差動信号やシングルエンド信号（LVDS/CML）は、自動車内の高速画像伝送に一般的に使用されています（図1）。この記事では、車載向け高速IOを静電気放電（ESD）や電気的過負荷（EOS）から保護する方法について説明します。
今回のPart1では「LVDS」を、続くPart2では「CML」について2回にわたりご紹介いたします。

図1. 一般的な車載用LVDS/CML系(FPD-LINKI/III,GVIF,GMSL,APIX etc.)高速IO接続例 © Semtech Corporation

ANSI/TIA/EIA-644で定義されるLVDS規格は、ツイストペアやツイナックス差動ケーブルを使用したデータ通信の高速長距離デジタルインターフェースです。（図２）
データは差動トランスミッタと差動レシーバの間で伝送され、伝送路の受信端には100Ωの終端抵抗が配置されています。
トランスミッタは定電流源で構成され、1対の差動ケーブルを通して公称3.5mAの電流を流します。LVDSトランスミッタはドライバとも呼ばれ、受信側の終端抵抗を介してこの3.5mAの電流源から差動間電圧を生成し、差動2本のケーブル上に正極と反転した負極の信号を発生させます。

図 2. 典型的なLVDS送受信ペア等価回路 © Semtech Corporation

過酷な環境の車載向けに LVDS インターフェース・システムを設計する場合、EOS からの保護は必須です。EOSの主な原因の1つはESDです。また半導体の微細化に伴い、この過渡的な脅威からIOを保護し、昨今の電子化された自動車の安全性と信頼性の要件を満たすことが不可欠です。ESD 保護は、LVDS 差動ラインに過渡電圧サプレッサ（TVS）保護素子を配置することで、立ち上がり時間の速い過渡電流や電圧からインターフェースを保護することが可能となります。

適切な保護ができない場合、この過渡現象はLVDSトランスミッタとレシーバの両方にダメージを与える可能性があります。
LVDSインターフェースの伝送速度は650Mbpsから1.3Gbpsが規格上の上限です。 ただし、各社からさらに高速な数Gbpsの伝送速度をサポートするLVDS互換製品も多くリリースされています。このIOは高速でデータを伝送するため、寄生容量が小さく、インサーションロスの少ない ESD 保護素子（TVS）の採用がシグナル・インテグリティを確保する上で極めて重要です。

図3：LVDS保護によく使用される製品、RClamp0594PWQの概要 © Semtech Corporation

セムテックのRClamp®0594PWQは、LVDSインターフェース等の高速差動ラインを保護するために特別に設計されています（図3）。
最大寄生容量0.8pFで4本の高速データラインを保護します。（差動では2ポート）
・IEC 61000-4-2（ESD）：±20kV（Air）、±15kV（Contact）
・ISO-10605 150pF/2kΩ：±30kV（Air）、±20kV（Contact）
パッケージは一般的な10ピンDFNパッケージ（2.5 x 1.0 x 0.55mm）、組み立て後の外観検査が容易なSide Wettable flankのピン構造を採用しています。また、基板信号の配線を邪魔しないフロースルー・パッケージでは、PCBレイアウトを簡素化し、シグナル・インテグリティを維持するためにも効果的です。
RClamp0594PWQ は、図 4 に示すように、LVDS トランスミッタとレシーバの保護に使用します。

図４：LVDSにおけるRClamp0594PWQの使用例 © Semtech Corporation

セムテックは、車載用LVDSアプリケーションを保護する幅広いTVS保護素子を提供しており、各アプリケーションの保護要件やシグナル・インテグリティを満たすTVS保護素子を選択可能です。
次の表1では、差動ラインに使用されるセムテックのTVSの一例を示しています。

表1： セムテックの差動ライン保護デバイス一例 © Semtech Corporation

セムテックはTVS保護素子のトップメーカーの1つであり、世界の最新車載電子機器の多くを保護しています。厳しい車載環境では、通信のバスやインターフェースを保護するために、TVSの適切な選択が必要不可欠です。
LVDS通信ライン向け以外にも、電源ライン向けなど多種多様な製品ございますので、下記のリンクをご確認下さい。

セムテックのTVS製品については こちら
本記事の最後にご紹介しているサンプルブックもお役立てください！

本記事は、Part2（CML）へと続きます。次号もどうぞお楽しみに！

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